膝関節の疾患(損傷)について
今回は、膝関節の疾患(損傷)について書きたいと思います。
とは言うものの、細かいところまでいくと沢山ありますので、ここでは今、私が思いつく限りのものだけをとりあえず書いていきます。
基本的には、その疾患(損傷)の原因や症状、そしてその疾患(損傷)を導き出す検査などを挙げていきます。
症状:運動後や長時間座位の後の焼けるような痛み
局所的腫脹
好発部位は膝蓋骨下面
検査:膝関節伸展への抵抗運動
膝蓋骨下面の局所的圧痛
膝関節の他動的屈曲
・オスグッド病(成長痛)
原因:大腿四頭筋の緊張
脛骨粗面への反復負荷
膝蓋骨の上方変位
外反膝
症状:膝関節の他動的屈曲での痛み
脛骨粗面の局所痛
局所的腫脹
検査:膝関節伸展への抵抗運動
⁂ジャンパー膝およびオスグッド病は基本的に膝蓋靭帯の問題であるというところでは共通している。
・膝窩筋腱炎
原因:足関節の回内変位
ランニング
脛骨の内旋変位
オーバーユース
ランナーに多い
腸脛靭帯(摩擦)症候群と診断ミスしやすい
症状:膝関節後外側の痛み(鋭い圧痛)
ランニングに伴う膝痛
検査:膝窩筋の抵抗運動で痛み(脛骨内旋への抵抗)
他動的脛骨外旋で痛み(重症の場合)
・ハムストリング腱炎
原因:足関節の過剰回内
股関節の内旋変位
症状:膝窩周辺の痛み
検査:膝関節屈曲への抵抗運動で痛み
膝関節伸展における脛骨の他動的内旋、外旋で痛み
・腸脛靭帯(摩擦)症候群
原因:腸脛靭帯と大腿骨外側上顆との摩擦
腸脛靭帯の緊張
大殿筋の緊張
足関節の過剰回内
症状:膝関節外側、ガーディー結節の痛み
膝関節外側ジョイントラインへの関連痛
転子包炎の併発(股関節外側の痛み)
膝の前側の痛みも出ることがある
検査:Ober`sテスト
膝関節完全伸展位の歩行で痛みなし
膝関節30°屈曲位で大腿骨外側上顆の圧痛(ズキンとする痛み)
・近位脛腓関節の運動障害
原因:足関節捻挫
膝から転倒
症状:膝関節外側の痛み
検査:足関節底屈、背屈に伴う腓骨頭の運動
膝関節90°屈曲位における腓骨頭の前後運動
足関節背屈で腓骨は上方+外旋、足関節底屈で下方+内旋する
⁂基本的に足関節の問題なので、まず足関節から診ていく(特に外果の運動)
・ベーカー嚢腫
原因:子供の場合、6歳から8歳、12歳から14歳ぐらいの時期の急激な成長
成人の場合、内側半月板後部の変性、滑膜炎などによる二次的要因
半膜様筋包炎(半膜様筋腱と腓腹筋腱の間)
腓腹筋とハムストリングの柔軟性の欠如
症状:腫脹
圧痛
膝窩の痛み(半膜様筋の外側)
検査:視診
触診
・前十字靭帯損傷
原因:膝関節の過伸展
脛骨の内旋(大腿骨の外旋)
症状:内出血(後十字靭帯損傷の場合、内出血はない)
膝関節後外側に痛み(大腿骨外側顆からの剥離を意味する)
半月板の損傷(前十字靭帯損傷患者の65%)
傷害時に断裂音(70%のケース)
外反膝になる(外側半月板を痛めやすい)
検査:Lachmanテスト(急性期に膝関節伸展位で脛骨を前方牽引)
Anterior Drawerテスト(慢性期に膝関節90°屈曲位で脛骨の前方牽引)
⁂傷害後数時間以内に行うのが望ましい
・後十字靭帯損傷
原因:膝関節の過屈曲傷害
ダッシュボード傷害
膝関節の過伸展傷害
検査:Posterior Drawerテスト
・半月板損傷
原因:膝関節の回旋+圧迫
外反力、内反力+回旋
足関節回内位により膝関節外反の力が働く
症状:痛みはジョイントライン(前側が多い)
深部痛
膝関節の腫脹(半月板損傷による腫脹は数日を要する)
膝関節伸展可動性が制限(引っ掛かり感)
痛みや腫脹がない場合もある
血液供給が少ないため血腫はまれ
ACL断裂が併発していることが多い
検査:半月板の検査が全て陰性であっても、関節の腫脹、膝関節伸展の制限、ジョイン トラインの圧痛があれば、半月板損傷の可能性
スクワットのボトム(深くしゃがむ)での痛みと捻髪音
大腿膝蓋関節傷害では、スクワットの途中で痛み
・離断性骨軟骨炎
原因:関節軟骨が下層の骨(軟骨下骨)から薄い骨片を伴なって剥がれる疾患、関節ね ずみの最も多い原因
骨棘
症状:関節のロッキング
痛み
検査:他動的膝関節伸展の制限
・シンスプリント
原因:脛骨過労性骨膜炎
前シンスプリント(前脛骨筋、長母指屈筋、長母指伸筋)
後シンスプリント(後脛骨筋、長母指屈筋、長趾屈筋)
症状:下腿の痛み(脛骨周辺の痛み、前脛骨筋⇒脛骨外側部の痛み、後脛骨筋⇒脛骨後内側の痛み)
深部痛
症状は立位で悪化
検査:筋肉の伸長、収縮で症状の悪化
脛骨周辺の痛み(疲労骨折との鑑別:タッピング)
・下腿三頭筋の肉離れ
原因:急激な足関節背屈と膝関節伸展
バスケットボール、ランニング、スキー
テニス足(腓腹筋内側頭の部分断裂)
患者は30歳以上
症状:足関節底屈位
膝関節後内側の痛み、腫脹
検査:つま先立ちで痛み
足関節底屈への抵抗運動で痛み
他動的な足関節背屈で痛み
自動的、他動的膝関節屈曲で痛み
他動的膝関節伸展で痛み
・膝蓋大腿関節の運動障害
原因:膝関節前部の痛みで最も多い
Qアングルの異常(内反膝、外反膝)
内側広筋の筋力低下(VMO、腸脛靭帯、膝蓋支帯の緊張)
大腿膝蓋関節の可動性減少
足関節の過剰回内
症状:膝蓋骨の可動性減少
捻髪音
階段の昇降で膝の痛み(VMOと内転筋結節に圧痛)
腫脹
長時間の座位の後に痛み
検査:膝伸展方向への抵抗運動で痛みの悪化
膝蓋骨圧迫検査(膝5°~10°屈曲位で行う)
ディスプレイスメントテスト(内方から外方、外方から内方への膝蓋骨の圧迫で痛み、最初は膝30°屈曲位で行い、後に完全伸展位で行う)
・鵞足包炎
原因:オーバートレーニング
半腱様筋の緊張
Qアングルの増加(外反膝、足関節の外反、脛骨外旋)
内側側副靭帯と鵞足腱の間の問題
症状:階段の昇りで痛み
長時間のランニングで痛み
局所的圧痛
検査:膝関節屈曲への抵抗運動で痛み
鵞足包の局所的圧痛と腫脹
・変形性膝関節症
症状:痛み
関節のこわばり
関節の変形
捻髪音
関節可動域制限
検査:主に画像検査(関節スペースの減少、骨棘、軟骨下骨化)
膝蓋骨の外方変位
⁂ 変形性膝関節症と半月板のサブラクセーションについて
考察:変形性膝関節症患者の半月板サブラクセーションは一般的である
半月板のサブラクセーションの程度は、関節のスペース減少と関連している
初期の関節スペースの減少は、関節軟骨の摩耗ではなく、半月板のサブラクセーションによるものと考えられる
以上、ザッと挙げさせていただきました。
当施療室では、これらのような疾患(損傷)においても診させていただいておりますが、当然ながら改善させられるものもあれば、状態によってどこまで改善させられるかやってみなければ分からないものもありますし、やってみた結果、力及ばず申し訳ないということもございます。
もちろん最初から、これは私の徒手療法ではどうにもなりません無理ですというパターンもございます。
もし不安でしたら、当施療室に来られる前に病院等の医療機関で診てもらうというのも一つの方法だと思います。