たいなか施療室にて

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むち打ち傷害(むち打ち症)

今回は、むち打ち傷害(むち打ち症)について書きたいと思います。

一般的に馴染みのある、むち打ち症で書いていきますね。

 

むち打ち症という言葉は1928年に初めて使われたそうです。

「主に自動車事故において後方もしくは横から追突されることによって生じる骨または軟部組織の傷害であり、急激な加減速メカニズムによって頚部に負荷が加わることによって生じる」と定義されています。

 

もっとも一般的な症状は、頚部の痛み、こわばり感、頭痛、めまい、頭頚部の可動域制限などです。

数週間内に症状の寛解が認められるケースもありますが、受傷から1年経過後も症状を訴えるケースも見受けられます。

症状の慢性化により、不安や鬱などの精神的な症状を訴える方が増えてきます。

また胃腸障害、不整脈、呼吸困難、睡眠障害などの自律神経系の症状を訴える場合もあります。

一般的に症状の慢性化が進むにつれて改善が難しくなっていきます。

これを説明する仮説の一つに「想起バイアス仮説」があります。

不安症傾向のある方は、症状の改善がなかなか見られないことに対してネガティブに反応してしまうという仮説です。

心理社会的因子(イエローフラッグ)ですね。

この心理社会的因子(イエローフラッグ)については私のホームページにあります症状についてのページに書いておりますので、ぜひご覧ください。

 

首の痛みやこわばり感は、むち打ち症の典型的な症状の一つなのですが、受傷直後ではなく受傷からから数時間後(場合によっては数日から数週間後)に症状を訴えるケースが一般的です。

これは椎間関節の滑膜炎によるものと思われます。

 

むち打ち症の受傷後に現れる頭痛は、頚性頭痛と思われます。

頚性頭痛とは「頚椎の傷害に起因する頭痛」と定義されています。

原因の一つに上部頚神経根(C1~C3)の絞扼障害があります。

後頭下筋群の拘縮や上部頚椎のサブラクセーションは、直接的に上部頚神経根に影響を及ぼします。

 

そして受傷後に現れるめまいは、頚性めまいと思われます。

頚性めまいは、椎骨動脈の血流障害、頚椎の固有受容感覚障害、頚部交感神経障害(バレー・リュー症候群)などが原因になります。

 

むち打ち症によって損傷および影響を受ける組織(構造)としましては、

筋肉・関節・関節包・脊髄(損傷自体は僅か)・椎間板(線維輪前部が好発部位)などがあります。

 

特に、むち打ち症において最も影響を受ける構造は、頚椎の椎間関節とそれを包んでいる関節包であることが示唆されています。

受傷後に生じる関節包の変性は、関節包の拘縮をもたらします。

また関節包には機械受容器や侵害受容器が密に存在しています。

関節包の拘縮により、これらの受容器には直接的に影響が及ぼされ、椎間関節の運動機能障害が引き起こされます。

従って、関節包の損傷に伴う受容器の機能異常は、慢性的な頚部痛の原因の一つであると考えられています。

 

私が行える検査として有効と考えるのは、

・可動域検査:急性期は全可動域に強い可動域制限と動作痛が現れます。

慢性期には特定の方向に可動域制限が現れることが多いので、その結果から問題部位をある程度、推察することが可能になります。

 

・整形外科的検査:整形外科的検査は主に頚神経根への影響を調べるために行います。

スパーリングテスト・椎間孔圧迫テスト・ジャクソンテスト等々などがあります。

 

・触診検査:急性期では炎症サイン(熱感・腫脹・発赤・疼痛)を配慮しながら行います。

慢性期では、筋肉(腱)・靭帯・神経・椎間関節の圧痛と硬結を探します。

頚部は密な構造になっているため、より精度の高い触診技術が必要になります。

 

私が行える治療としましては、

・軟部組織:筋肉(腱)・靭帯・神経に対して治療を行います。

急性期(炎症期)においても、刺激の量を調節(接触の強さ、可動域など)することで治療を行うことが出来ます。

慢性的なむち打ち症には、特に深部にある軟部組織を中心に治療を行います。

 

・アジャストメント、モビリゼーション:頚椎の他動的可動域検査において強い疼痛がない場合、アジャストメント、モビリゼーションによって可動域の改善を目指します。

また慢性的なむち打ち症のケースにおいて動作痛がある場合、軟部組織の治療後に動作痛が寛解したのを確認してアジャストメント、モビリゼーションを行うようにします。

 

あとは、どこまで私が対応できるのか、改善させることが出来るのかということなのですが・・・

 

むち打ち症には障害のグレードがあります。

・グレード0:頚部に主訴はなし。身体的兆候はなし。

・グレード1:頚部の痛みや硬さ、圧痛のみ。身体的兆候はなし。

・グレート2:頚部の痛みと筋骨格系障害、関節可動域の制限と圧痛。

・グレード3:頚部の痛みと神経系起因の痛み、深部腱反射の低下または消失、筋力低下や知覚鈍麻。

・グレード4:頚部の痛み、骨折、脱臼。

と分類されているのですが・・・

 

私が確実に対応できるのはグレード2までです。

グレード3は状態によりますね。

グレード2寄りのグレード3でしたら、何とか対応が可能かもしれません。

ここは、とりあえず一回、診せていただかないことには何とも言えないところですね。

 

しかし私の経験上、グレード2までの方が結構いらっしゃるという印象が強いです。

 

もし事故かなんかで、それから首の調子がおかしいのだが、いっこうに良くならないというような症状をお持ちの方は、一度ご相談して頂ければと思います。

 

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